Voices

6月23日[2026]

Ryotaro Muramatsu

没後100年。ガウディの創造性の原点を曝け出したNAKED代表・村松亮太郎が見据える「100年先の未来」

「NAKED meets ガウディ展」――このワクワクさせる響きはどうだろう。NAKEDといえば、京都二条城や東京駅をはじめ、国内外で大規模なプロジェクションマッピングショーやインタラクティブアートを仕掛けるクリエイティブ・カンパニー。うねるような曲線や色鮮やかなモザイク装飾で知られる唯一無二の建築家を、彼らはどう解釈したのか。NAKED代表を務める村松亮太郎氏に経緯を聞いてみると、なぜか話は第一次産業まで広がっていき…?

ガウディの人物像、
その根底にある哲学にフォーカス。
人生を追いかける建築展

NAKED Ryotaro Muramatsu
村松亮太郎

僕はもともとガウディの大ファンだったんです。僕のアート作品にも、ガウディの言葉からインスピレーションを受けて作ったものがある。かねてから、ガウディの考えとNAKEDの目指すものに親和性があると感じていた。なんなら「ガウディを一番理解しているのは僕だ!」ぐらいの矜持があったので、オファーをいただいた時は運命を感じましたね。

海外の偉人の作品を、外国人である僕らに預けてもらえる機会はなかなかありません。それでも海外で展示を行ったり、海外の題材を扱った経験はあった。そして、僕らの作品は国内外で公開されていますから、インターナショナルカンパニーとして認識していただいている。ガウディ財団側もNAKEDの仕事をかなり調べて、共通するものを見出してくださったようです。

財団は、建築作品そのものの管理をしているわけではありません。ガウディの作品、マンションや公園などは世界遺産にも登録されていますが、それぞれにオーナーがいて、その権限で管理されています。おそらく財団が注力されているのは、未来のガウディ研究を進めるために奨学金を出すなど、ガウディのレガシーを伝えていくことなのだと思います。今回も「ガウディの本質を広く理解してほしい」「ガウディが追い求めた究極のビジョンを、時代を超えて現代に響かせ、より良い未来へとつなげたい」ということを非常に重視しておられました。一方で、素材の扱い方など細かいことは比較的自由にやらせてもらえた。僕らの提案もスムーズに受け入れられたし、ガウディの理解者として全面的に信頼していただけたと感じています。

NAKED Ryotaro Muramatsu
村松亮太郎

実物がなくても、実物を見たのと同等の満足をお客様に提供しないといけない。その中で今回ありがたかったのは、日本初公開の貴重な資料をたくさんご提供いただけたこと。またAIを使ったフニクラ体験など、NAKEDらしいインタラクティブな試みも盛り込んでいます。企画段階では、もっとイマーシブな要素が多かったんですよ。ただ、「体感した、面白かったね」で終わらせず、ちゃんと理解してもらうため、バランスに苦心しました。また今回の展覧会は、普段僕らが手がけている展覧会に比べてテキスト量がとても多いです。文章を読ませること、実物を見せること、体感的な要素、この3つをどう統合するか――この課題は、ある程度達成できたんじゃないでしょうか。

ガウディを扱う以上、建築をしっかり勉強されている方も見に来られるし、一方でお子さんやファミリー層にも見てほしい。幅広いレンジの皆さんに満足していただくことに一番心を配りました。まず意識したのは「建築展」ではない、ということ。没後100年を迎えるガウディ、その人物にフォーカスすることは、財団の意向でもあり、僕らのやりたかったことでもあるんです。幼少期以来の「自然」の影響、バルセロナでの体験…と、本展のようにガウディの人生を追うようなゾーニングは、建築展としては珍しいやり方かもしれません。ただガウディの表現手法だけでなく、その背景にある哲学には、建築家に限らず、僕らのような表現者にとっても、非常に学ぶものがあると思います。

NAKED Ryotaro Muramatsu
村松亮太郎

DANDELIONは僕のアート作品で、平和やより良い未来への祈りを世界につなげていこう、というもの。この試みはガウディ財団にも気に入ってもらえて、今回は特別バージョンを作りました。

本展覧会以前からこのシリーズを作り続けているのですが、実は初期のアイデア段階から、下の方にタイルを敷き詰めたガウディを思わせるデザインだったんですよ。僕自身もモザイク表現が好きで、いろんな作品に取り入れています。モザイク的なものは世界中にあります。紋様自体は少しずつ違っても、チベット、ビザンチン、…曼荼羅も近いかもしれない。この表現はなぜ普遍性があるのか、考えていくと面白いです。

DANDELIONは「つながるアート」であり、ただその場で吹いてキレイなだけでなく、「ここで吹いた綿毛が飛んで行って、別の場所で花が咲く」という仕組み。今回のガウディバージョンは、最終的にはバルセロナで展示したいと思っています。

「『bitの藻屑』にはなりたくない」。
NAKEDが未来に見据える
「ファンダメンタルな価値」

NAKED Ryotaro Muramatsu
村松亮太郎

表現の方法は、実は何でもいいんです。そもそもNAKEDという名前も、「裸がカッコよければ、服は何を着てもカッコいい」という意味。世界観とかストーリーとか、今回なら「ガウディの本質を伝える」という芯の部分、裸の部分をしっかり押さえた上で、最適な表現、求められる表現に振っていくだけ。これは僕がもともと映画を作っていた経験によるところが大きいかもしれません。俳優、カメラ、脚本、照明、いろんな要素をまとめ、トータルな総合芸術を作っていく。必ずしもイマーシブでなくていいわけです。

今、美術展などでもイマーシブ体験はとても増えていますが、そうなると僕は、逆にちょっと冷めちゃう(笑)。AIのおかげで、デジタルアートなんて今後いくらでも自動生成できてしまうでしょう。その時アーティストって何なのか、何ができるのかを考えています。AIが今ほど流行るずっと前から言っているのですが、僕は「bitの藻屑」にはなりたくないんですよ。

そういった意味で、今興味があるのは「食・農業」などの第一次産業です。デジタルアートは、近い将来AIに淘汰される。リアルなものがあることで、ファンダメンタルな価値が担保されるんです。僕が二条城のプロジェクトを続けているのもそこです。ネット上に二条城を作ることもできるけれど、リアルの二条城は唯一無二のもの。その意味ではVS.もそうですね。確かな、リアルな場があって、そこで新しいものを作り、社会に伝播させていく。「確かなもの」って曖昧な感覚かもしれませんが、そこにしか価値は残らないと僕は思います。

「天井高15mのSTUDIO Aは、やはりVS.最大の魅力。僕たちは空間を作るけれど、ハコそのものは作れない。実際の建物に入ったような迫力をまざまざと感じられるのは、この場の力のたまものです」
「VS.ではテーマごとに空間をしっかり分離できて、展示をレイアウトしやすかった。お客様にもそれぞれのゾーンの世界に入り込んでいただける、完成度の高い展覧会になったと思います」
「建築家がガウディを尊敬して彼に学ぶとしても、その表現の様式はガウディに似ていなくていい。全く違うタイプの表現者にとっても、ガウディの根底にある哲学には、学べることは多いんです」
「DANDELIONの取り組みには賛同いただける方も多く、これまで世界60カ国ぐらいで展示しています。ただ常設展示が難しいのが課題。現在は広島と台湾の2カ所で常設しています」