EXHIBITIONS
VS. OPENING EXHIBITION
Continuum Resonance
連続する共鳴
真鍋大度新作個展
Daito Manabe New Installation
9月6日ー10月14日 [2024]
会期
2024.09.06(Fri) – 2024.10.14(Mon)
料金
入場料無料(事前予約)
会場
VS. STUDIO A/B/C,V Space
開館時間
10:00 – 19:00
※初日のみ14:00 開場
協力
グラングリーン大阪開発事業者
機材特別協賛
株式会社タケナカ
主催
About
本展示は、数学的アルゴリズム、音楽プログラミング、3D建築データを活用して制作された作品群が、「VS.」の各空間にそれぞれに設置される形で構成されています。
真鍋大度は、自身のアーティスト活動の基盤として、数学と音楽の関係性の探求を重視していますが、その影響源の一つに、ギリシアの現代作曲家ヤニス・クセナキスの「音楽と建築」(1971)があります。クセナキスは「Expo 58」における建築家ル・コルビュジェとの実験的かつ革新的な作品で、空間全体を有機的な光・色・映像・リズム・電子音響で満たしたメディアアートの原点ともいえる先駆的な表現を行っています。
本展「Continuum Resonance」では、真鍋がシナン・ボケソイ(アーティスト/コンポーザ)と共同開発した画期的な3D音響ソフトウェア「PolyNodes(ポリノーズ)」(2024)を全面的に使用しています。このソフトウェアは、3D空間内で音の動きや変化を自由にデザインし、視覚的にも表現することができます。音の位置や強さ、音色の変化などを空間内で動的に制御し、それに合わせて視覚的な要素も変化させることで、音と映像の要素が融合した没入感のある体験を創出します。これにより、鑑賞者は前例のないオーディオビジュアルの空間を体験することができます。
PolyNodes(ポリノーズ)について
「PolyNodes」は、音楽制作と3Dサウンドデザインの常識を覆す革新的なジェネラティブ・オーディオ・シンセシス・ツール*です。シナン・ボケソイ(アーティスト/コンポーザ)と真鍋大度によって2024年に共同開発・発表されました。
本システムは、従来のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)とは一線を画すアプローチで開発され、音を3D空間で視覚化し、直感的な操作を可能にする画期的な仕組みを特徴としています。音楽理論や高度なプログラミングスキルがなくても新しいサウンドを創造できる一方で、深い音響学の知識を持つ専門家には、その知見を視覚的に表現し、新たな音響設計の可能性を探求できる制作環境を提供します。
本ソフトウェアは、アルゴリズムやルールによって音の生成やエフェクトを自動化し、人間が直接的に入力することなく、システムを構築することにより、時間軸に沿って展開する音響風景や音響構造を生成します。また、線形幾何学的発想だけではなく、ブラックホール(Black Hole)、ホワイトホール(White Hole)といったパラメータにより、非線形的変化への対応が組み込まれています。ジェネラティブ・オーディオ・シンセシスは、モデルの複雑性、アルゴリズムの操作、最新のAIの手法だけで定義されるものではありません。むしろ、音色の進化、音響的相互作用、音の構造的ニュアンスといった音響設計要素を的確に把握し具現化するソフトウェアとして、設計者の思考を直感的に反映させることができるのが特徴です。
*ジェネラティブ・オーディオ・シンセシス・ツール
コンピュータによるアルゴリズムで自動的に音を生成・変化させる音楽ツール。アルゴリズムの設計自体が作曲過程となり、音の進化や相互作用を表現します。多様な技術で設計者のビジョンを具現化し、音楽制作の新境地を開拓。テクノロジーと芸術の融合を体現する先進的創作手法です。
会場構成
本展は、形状の異なる4つの空間に展示された作品(いずれも新作)で構成されます。これらの作品を通じて、「PolyNodes」の技術的・表現的可能性を探求し、リアルタイム生成と事前設計の両面から音響技術と立体的空間表現の新たな関係性を提示します。
作品解説
Work 1 (STUDIO C)
「PolyNodes Installation Debug Views」
(ポリノーズ・インスタレーション・デバッグ・ビュー)
鑑賞者の位置データと展示場所の空間特性データを解析して「PolyNodes」の複雑なパラメータ制御によるリアルタイムの音響生成とアウトプットを行います。プロジェクション映像はセンサーの情報と「PolyNodes」の作動を表示したもので、「PolyNodes」の作用や機能が具体的に理解できる空間です。
Work 2 (STUDIO B)
「PolyNodes Visualization 2」
(ポリノーズ・ビジュアライゼーション2)
鑑賞者の位置データと展示場所の空間特性データを解析して「PolyNodes」のパラメータ制御(特に「Black Hole」*パラメータを使用)によるリアルタイムの音響生成を行い、さらにシンセサイザー、ドラム音などを追加した音響を作成しアウトプットを行います。プロジェクション映像は「PolyNodes」、音響、そしてセンサーデータを用いてリアルタイムで生成した映像です。
*Black Hole (ブラックホール) :「PolyNodes」内に設定された非線形的空間作用を発動するパラメータ。
Work 3 (V Space)
「PolyNodes Augmentation」
(ポリノーズ・オーグメンテーション)
鑑賞者の位置移動、カメラ映像などの動的データと、建築空間の静的データを解析し「PolyNodes」によって音響生成します。さらに「PolyNodes」の稼働する立体的オブジェクトの影を壁面へのプロジェクションによって可視化し、オーディオビジュアルに表現します。これらは特別なディスプレイを通じてARを利用した体験としても鑑賞できます。
Work 4 (STUDIO A)
「Synthesis of Body-Space-Music [身体・空間・音楽の融合]」
(シンセシス・オブ・ボディ・スペース・ミュージック)
この展示空間は、天井が特別に高い特殊な形状であり、この空間の計測データおよびダンサーの身体運動データと、事前作成された「PolyNodes」音源を素材として使用しています。身体・空間・音楽をテーマとした、この場所でしか実現できない表現を試みます。マルチプロジェクションによる没入的なオーディオ・ビジュアルを体験できます。
アーティストステイトメント
本展では当初、これまでの個⼈としての活動の軌跡を再検証するため、過去20年間の作品を包括的に展⽰する企画を考えていました。しかし、安藤忠雄⽒の建築に触発され、新たな挑戦へと⽅向転換しました。
私の制作の根幹には数学と⾳楽があります。⼤学時代に読んだヤニス・クセナキスの「⾳楽と建築」という本に衝撃を受け、現在の活動の萌芽が⽣まれました。それ以来、様々な⼿法を学び、経験を積み重ね、多様な表現を追求してきました。
本展「Continuum Resonance:連続する共鳴」では、この建物の持つポテンシャルと空間特性を最⼤限に活かし、私の制作の原点を現代の⽂脈で再解釈する新作の制作に取り組むことにしました。「VS.」という安藤建築の空間との対話を通じて、これまでの経験と最新の技術的成果が融合した新たな作品を⽣み出したいと考えています。
作品の背景
本展は、VS.の各展示空間において、各々独自のオーディオ・ビジュアル・インスタレーションで構成されています。(Work1~4の4作品はいずれも本展のための新作となります。)各空間のオーディオ/ビジュアル要素は、3D音響デザインソフトウェア「PolyNodes」を基盤として制作されています。このシステムを通じて、建築空間のデータ、鑑賞者の位置移動データ、生成される音が統合された体験を生み出します。
インスピレーション源としてのクセナキスのインスタレーション
「PolyNodes」の発想源の一つに、ヤニス・クセナキス(1922-2001)の思考や方法があります。「PolyNodes」は、現在的視点から大幅に発想を拡張し、様々なアイデアを統合しながら開発されています。クセナキスによるメディアアートの先駆的事例として、1958年ブリュッセル万博(Expo 58)のフィリップス館があります。建築・空間・音響を担当したクセナキスは、有機的な生体内蔵の形態と数学的な双曲放物線を融合的に用いた独特の幾何学的建築形態を生み出し、425個のスピーカーを内部壁面に分散配置することで、独特の音響空間を創出しました。クセナキスはその後、空間の音響粒子的な発想を展開させ、電子音響光学インスタレーション「ポリトープ」シリーズ(1960〜80年代)を制作しています。また1970年の大阪万博(Expo’70)における「鉄鋼館」では、1008個のスピーカーを全空間的に配した円環型音楽ホールのために、テープ音楽「ヒビキ-ハナ-マ(響-花-間)」を作曲しています。
新たな音響空間の創造
「PolyNodes」は、従来の2Dの波形表現を3D空間に拡張し、連続的に変化する空間の探索を可能にします。このソフトウェアは、プラグインとして誰もが利用できる形でリリースされており、3D音響空間生成のための最新テクノロジーを提供しています。本展「Continuum Resonance」は、「PolyNodes」のシステムを駆使して多様な可能性を探求し、建築・音楽・テクノロジーを新たな形で融合する挑戦的な作品です。
真鍋 大度
Daito Manabe
新しい文化装置VS.
そのオープニングを飾る真鍋大度の新作個展
「Continuum Resonance:連続する共鳴」では
VS.の特徴的な建築空間
すべてを活かした新作インスタレーションを公開。
真鍋がS・ボケソイ氏と共同開発した3D音響ソフトを用いて生成される音や映像が空間と融合しながら誰も見たことがない体験を提供します。
Daito Manabe
真鍋 大度
アーティスト、プログラマ、コンポーザ
身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。高解像度、高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく、注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや、人間と機械、アナログとデジタル、リアルとバーチャルの関係性、境界線に着目し、様々な領域で活動している。
https://daito.ws
真鍋大度の新作「Continuum Resonance(コンティナム・レゾナンス):連続する共鳴」は、「VS.」の各空間にインストールされた自律的な作品が、数学的アルゴリズム、音楽プログラミング、3D建築データを共有して影響し合う作品です。 今回、真鍋がシナン・ボケソイ(アーティスト/コンポーザ/クセナキス研究者)と共同開発した画期的な3D音響ソフトウェア「PolyNodes」を用いて、空間そのものが3次元的に変動するオーディオビジュアルの共鳴空間を表現します。