Voices

8月8日[2024]

Takuya
Nomura
VS.
Kenichiro
Yamamura

さまざまなヒト・モノが集まり、ぶつかり合って新しい価値を生み、社会に向けて発信・実装していく「社会的メディア」としてのVS.の役割

西日本最大のターミナルであるJR大阪駅の目の前に、この秋先行まちびらきを迎える「グラングリーン大阪」。その広大な都市公園の中心部に位置する新しい文化装置、「VS.(ヴイエス)」とは? この場所に関わる人々の思いを語り合うことで、VS.の存在意義、社会的機能、将来的に目指すものを解きほぐしていきたい。

初回は、VS.の起ち上げから中心となって企画に携わり、開業以降の運営も行う、野村卓也事務所代表取締役社長の野村卓也と、トータルメディア開発研究所代表取締役社長の山村健一郎が、そもそもの企画コンセプトから、開業に向けての意気込みまで、思いの丈を語り合った。

一つのテーマに縛られない「メディア」。
VS.は「施設」ではなく「装置」である

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私はうめきた1期、グランフロント大阪内のナレッジキャピタルにも、構想段階から関わってきました。多様な人々が集まって知的創造をする交流の場として、開業から11年余、現在も運営を手掛けています。今回のうめきた2期では、当初私が打ち出していたのが「希望の杜」という構想。一人一人の人間が幸せになる、誰もが希望を持てる社会をつくる・考える場にしたい、という考えです。2期にはもともと「みどりとイノベーションの融合」が開発要件として求められており、「ネクストイノベーションミュージアム」と仮称してプロジェクトを進めていきました。
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ただ「ミュージアム」という言葉には、限定された意味がありますね。収蔵品を持ち、キュレーターがいて、何らかのテーマを持って展覧会を開催する。私どもトータルメディア開発研究所は、これまで多くの美術館・博物館開発に携わってきましたが、今回が初めての自主運営となります。その立場で改めて「ミュージアムとは何か」を考えた時、いろんな人が集まり、交流して変容しながら新しいものを作っていく場でありたい。それはテーマを持たず、いろんな考えを社会に発信し、実装化していくための「装置」ではないか。「施設」ではない、「装置」としてのあり方をイメージしています。
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単なる「文化施設」では、ここだけで閉じたものになってしまう。「装置」とはすなわち、新しいメディアです。メディア論で有名な社会学者であるマーシャル・マクルーハンは、「メディアはメッセージだ」と主張しましたが、ここから新しい価値を社会に提案していけるよう、コンテンツ以前にVS.そのものをメッセージとして受け取ってほしいですね。
もちろんコンテンツも重要ですよ。オープニングエキシビションの真鍋大度さん、続いて竹中工務店さん、安藤忠雄さん、という流れも、「普通の施設とちょっと違うぞ?」と認知してもらうためのメッセージ。たとえば真鍋さんにしても、VS.の存在意義をよく理解した上で、新しいエキシビションを考えてくださっています。アーティストやクリエイターたちが、この場所に刺激を受けて表現活動してくれることが重要ですね。
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単にエキシビジョンだけをやっていくのではなく、それに関わる研究者やデザイナーらを組織化する計画も進めています。そういった組織と企業とをぶつけ合うことで、また新しい動きを作り出すことができるはずです。なので、まずはVS.を見て、感じてほしい。私たちのやっていることを見て、「VS.スタイル」といったものを、社会に共有してもらえると嬉しいですね。

大阪のクリエイティブパワーを
活かして次世代へ、そして世界へ

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私どものトータルメディア開発研究所は、もともと1970年の大阪万博で太陽の塔を作ったプロデューサーが起ち上げた会社です。その後、万博跡地に国立民族学博物館を作り、海遊館と協力して新しいスタイルの水族館「ニフレル」を作った。会社のエポックになる事業が、大阪に3つ並んで建っているわけですが、我々としてはその4つ目がこのVS.だと認識しています。
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大阪には新しい価値、新しい文化が生まれてくる土壌が、クリエイティブパワーがありますからね。
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来年には大阪・関西万博があり、もちろん私どものグループ会社も携わってはいますが、個人的にはそれよりもVS.に興味がある。半年で終わってしまう万博より、こちらの方がきちんとレガシーが残ると考えるからです。さらに、運営し続けていくには根性も必要。「文化施設を独立採算制で運営するのは無謀」との声もありますが、それを成立させることがビジネスマンとしての役割です。半世紀前に万博をプロデュースしたことで会社が始まったように、VS.を起ち上げることで、また新たな会社の形ができてゆく。会社としても大きなチャレンジです。
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事業として考えた時、いわゆる貸館の要素もあるのですが、私たちとしてはできるだけ主体的に関わって、クリエイティブパワーを活かして新しい形態のものを見せていきたい。真鍋さん安藤さんに続いて、次の世代にもいろんな形で参加してもらうことが必要です。たとえばナレッジキャピタルから出てきた人材が、VS.で新しいチャレンジをする、という連携も考えています。若い世代、特に子どもたちに、「ここを使ってこんなことをやりたい」と、発想をふくらませてもらいたい。また、ここに訪れる人には「新しい自分を発見できる」場所になればと思っています。
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一方で、シニア層にも頑張ってほしいですね。近年は、シニアのスタートアップも増えていますし、ユニークなアイデアを持っている方もたくさんいらっしゃいますから。
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これからの課題としては、海外に発信する仕掛けを作っていくこと。この場所は関西、日本だけでなく、世界への窓口です。その点、来年万博があり、大阪に世界の注目が集まっているこのタイミングは、VS.にとって追い風。「万博に来たついでにVS.を見て行こう」、もっと言えば「VS.を見に来たついでに万博も見て行こう」となるのが望ましいですね(笑)。
天井高15mの大空間「STUDIO A」は、野村が特にこだわったもの。単に大きなものが展示できるだけでなく、映像展示でもイマーシブな空間を実現できるほか、「今、人はスマホを見るためにいつも下を向いているけれど、これだけの高さのある空間に来ると、自然に上を見上げてしまう。地下の空間にあって、視線を上に上げる面白さを感じてほしい」。
野村「ターミナルの駅前、これだけの緑がある中で、世界的建築家が設計監修した空間。このロケーションそのものが皆さんにとっての最初の体験です。訪れる段階から、驚いたりワクワクしてほしい」
CURRENT SHOW

真鍋大度の新作「Continuum Resonance(コンティナム・レゾナンス):連続する共鳴」は、「VS.」の各空間にインストールされた自律的な作品が、数学的アルゴリズム、音楽プログラミング、3D建築データを共有して影響し合う作品です。 今回、真鍋がシナン・ボケソイ(アーティスト/コンポーザ)と共同開発した画期的な3D音響ソフトウェア「PolyNodes」を用いて、空間そのものが3次元的に変動するオーディオビジュアルの共鳴空間を表現します。

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※入場料 無料(事前予約制)