Voices
 
                     
                2月11日[2025]
Tambara
Okitsu
企業展における「キュレーション」の役割とは。企業チームに明確な当事者意識を獲得させたキュレーター・丹原健翔のアプローチ
2025年の幕開けを飾るエキシビションは、日本を代表する大手総合建設会社、竹中工務店による「たてものめがね・まちめがね展」。目指したのは「建築やまちづくりの魅力を広く発信し、次世代の建築人材を育てる」展示会だった。VS.からは、アーティスト/キュレーターとして国内外で活動する丹原健翔氏を任命し大阪本店設計部の興津俊宏リーダー率いる竹中工務店若手チームとともにプロジェクトを推進した。精鋭チームが「今までにない企業展」に取り組んだ軌跡を聞く。
アートと社会の間に立ち
「キュレーション」の可能性を拡張する
――丹原さんは、キュレーターとして今回参加されていますが、キュレーターはどんな役を担うのですか?

 
一言でいうと「展覧会の内容を考える」といった仕事で、いわゆる美術館の学芸員に業務内容が似ている部分も大いにありますが、僕はどこかに所属していない、いわゆるインディペンデント・キュレーターとして活動をしています。そのため、芸術祭や、企業主催の展覧会など、期間が限定的だったり、内容が流動的な企画に関わることが多いです。
元々はアメリカでパフォーマンス・アーティストとして活動していて、公共空間での体験や空間づくりに関心があったのですが、帰国してからはパフォーマンス・アートという限定的な領域に限らない表現として、展覧会のキュレーションを担当するようになりました。
その結果、研究テーマをどう整理し、一般の人に伝えていくかといった美術館的な方法論とは異なる、鑑賞体験を軸にした空間づくりや、展覧会という形に縛られない教育プログラムなど、様々な取組に挑戦してきたと思います。それで自分の中でキュレーションという言葉がどんどん広義的になったのも事実で、従来の展覧会ではよく見られる、一方に専門家や天才、他方に(無知な)一般客という一方向的なコミュニケーションには限界を感じることも多かったです。
今回の「たてものめがね まちめがね展」は、企業展という形式をどのようにアップデートできるかを皆さんとともに考えた結果として生まれました。一方的なトップダウンで説明するような展覧会にしたくなかったんです。観客が鑑賞経験を通じて、発見や学びを自ら得ることができる展覧会を目指しました。
主催企業が当事者性を獲得するために
準備段階でアート意識を高めていく
――竹中工務店のチームリーダーは、入社18年、設計畑ベテランの興津さん。日本初の耐火木造オフィスビルをはじめ、諏訪湖の畔に建つ日亜化学工業の研究所、北アルプスのふもとに建つサントリー天然水ブランドの体感施設、六甲山の急斜面に建つ神戸薬科大学のキャンパスなど、用途もロケーションも多種多彩な建物を手がけておられます。そんなお二人が、本プロジェクトでタッグを組んだわけですね。

 
チームメンバーは総勢16名ほど。設計部のほか都市開発系、研究職までいろんなセクション・ポジションから集まって来たのですが、展示会のためのアイデア出しを始めたのは、キックオフから数カ月経ってからでしたね。
 
最初から一番重要だと思っていたのが、チームメンバーが自社や本プロジェクトに対する当事者性を獲得することです。最初の数ヶ月は、チームビルディングのワークショップや、そもそも展覧会という表現方法について過去のアート作品を元に議論を重ねたり、アイデアを出し合うような時間が多かった。当事者性というのは、一人ひとり関わっている人が本プロジェクトを「自分ごと」にしてもらうことです。
こういった企業のアートプロジェクトは、往々にして「他人ごと」になってしまいがちなんです。こちらで企画を出し、中身を作って、要所要所で上層部の人がOKを出すだけ、という。それが悪いというわけではないのですが、今回竹中工務店がやろうとしているのは、会社自体がはっきりと当事者性を持ったものでした。誰かに依頼して作ってもらうのではなく、全部自分たちで作る、ということが活かされる企画だからこそ、アイデア出し以前の段階でワークショップなどに時間をかけたわけです。
 
当初は、私たちがここまで実動するとは思っていなかった(笑)。ただ、私たちは普段からものづくりに関わっているので、手を動かし始めるとどんどんこだわりが出てくる。企画から完成まで、いろんな条件や課題をクリアしながら、いろんな人に協力してもらって一つの作品を作っていく、というのは、普段の仕事の工程と同じなんです。
 
今回の企画が、「クライアントに展示会を提供する」という既存の企業展のフォーマットでなく、「クライアントが作る」という新たな形の企業展のケーススタディになるのでは、という期待が当初はありました。でもここまで併走してわかったのは、今回の方法は竹中工務店の皆さんといっしょにやったからできた、ということ。当たり前といえばそうですが、キュレーションだけでできることは限られています。竹中工務店の皆様がずっと高い熱量を持っていて、率先して動いたり、夜遅くまで打ち合わせが長引いても笑いが絶えないチーム感を持ってくれたので、ここまでのことができたと思います。
最初のコンセプト決定から展示内のウォールテキストのレイアウトまで、一つのチームが当事者性を持って見届ける企業展は、私が知る限り国内外みても聞いたことがないですし、容易に真似ができるような企画ではないなと感心しています。
親しみやすい体験展示で
建築を目指す次世代の「原体験」をつくる
 
私どもの社員はみんな、建築やまちづくりを面白いと思っています。その面白さを一般の方々にわかってもらい、興味を持ってもらいたい、というのが今回の展示のメインテーマ。建築の考え方の基礎になる「縮尺」を切り口に、親しみやすい体験展示やワークショップに落とし込みました。
今回最初に見ていただく部屋が、VS.のSTUDIO A、あの天井高15mの大空間。「等身大の部屋」として、縮尺の基準を感じてもらう「つかみ」に当たります。

 
展覧会を作る基本として、その場所で展覧会を行う必要性が感じられることは大きな要素です。あの大空間はまさに、VS.でやるからこそ使える場所でしたし、大型インスタレーションをやろうという話は初期段階からチームでイメージ共有できていました。
今建築やまちづくりに携わっている人には、みんな何らかの原体験がある。この展示会が、次世代の方々にとってそんな原体験になってほしいという願いを竹中工務店の皆様から僕は読み取りました。だからこそ、子どもや学生などこれまで建築に触れてこなかった人、なんなら竹中工務店を知らないぐらいの人に見に来てほしいですね。

10月25日-11月9日 [2025]
            ゲーム「Fate/Grand Order」の配信開始から10年。あなたと共に歩んできたサーヴァントたちの輝きの一瞬がここに。計500点を超えるサーヴァントの最終再臨イラストや霊衣イラストなどを高精細印刷や特殊印刷にて一堂に展示します。
It has been 10 years since the game “Fate/Grand Order” was released. Here lies the shining moment of the Servants who have journeyed alongside you. Over 500 pieces, including Servant Final Ascension illustrations and Spiritron Dress illustrations, will be displayed together using high-definition printing and special printing.
 
 
                         
                    